研究概要 |
酸性雨の実態調査:鳥取県内17地点の降雨を分析した結果,1991〜93年の各地点の雨水の平均pHは林内雨を除き4.6〜4.9の範囲にあり,冬期に低く夏期に高い.沿岸部は山間部に比べpH<4.5の降水頻度が高い.'90〜'93にかけ徐々にpHが低下する傾向が見られた。雨水中全イオン,非海塩(nss)イオン,nss-SO_4^<2->濃度とも冬期に高く夏期に低い.nss-SO_4^<2->,NO_3濃度が高いほどpHは低下し,SO_2の年間湿性沈着量は約3g/m^2,NO_2は約1.4g/m^2であった. 酸性雨の土壌への影響:酸性雨に対する緩衝能が弱いと考えられる砂丘未熟土と,黒ボク土,褐色森林土,赤黄色土の緩衝機構を,カラム浸透実験によって調べた.砂丘未熟土はpH5.6及び4.0の雨水を浸透させた場合,浸出液はpH6前後以上で意外に緩衝能が高く,一次鉱物からの塩基の溶出が大きいと考えられた.一方黒ボク土は低pHの雨水に対する緩衝能が高く,Alの溶出によるところが大きい.赤黄色土と褐色森林土の緩衝能は上記の2土壌の中間で,前者は砂丘,後者は黒ボク土に似た緩衝機構を持つと考えられた.下層土を加えた,計50cmまでの黒ボク土のカラムに人工酸性雨(pH3.0)を浸透させて下層土の反応を検討した結果,酸性雨の下層への影響は小さいと考えられた.またO層(堆積腐植層)の緩衝能が極めて大きいことが認められた. 植物体への影響:鳥取砂丘土壌に栽培したトマトに人工酸性雨を地上部のみ,或は土壌浸透許容条件下で噴霧した場合,地上部のみ噴霧の方が低pHの生育阻害効果が大きかった.これは葉や茎に対する直接害の影響が大きく,土壌の緩衝能は酸性雨の障害を軽減することを示唆した.さらに,培地の酸性に弱いホウレンソウ,中〜弱とされるエンドウ,強いとされるトウモロコシ及びダイズに対する酸性雨噴霧実験の結果,耐酸性の強弱は地上部への直接害についても適用できることがわかった.また,幼植物は成熟植物よりも敏感であることもわかった.
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