研究概要 |
本研究では軟腐病菌Erwinia carotovora Er株につき,1)ペクチン酸リアーゼ遺伝子の全構造,発現制御機構2)ペクチンリアーゼ遺伝子の全構造,発現制御機構3)ペクチン酸リアーゼの細胞外分泌機構の3点につき解明を試みた。まずペクチン酸リアーゼ遺伝子については,從来クローン化されていたペクチン酸リアーゼ遺伝子IおよびIIIの他に,ペクチン酸リアーゼ遺伝子IIをクローン化しその全構造を決定した。またペクチン酸リアーゼ遺伝子Iについても再検討し,以前の報告を一部訂正した。 構造解析の結果,ペクチン酸リアーゼ遺伝子I,II,IIIは夫々独立した転写単位をもって近接してタンデムに位置しており,一個のクラスターとして存在していることを明らかにした。次に,ペクチンリアーゼ遺伝子の全構造を明らかにし942bpであること,これよりペクチンリアーゼは314個のアミノ酸残基よりなり,分子量33,700Daであると推定した。ペクチンリアーゼ遺伝子の5'上流域の塩基配列には-35-10領域,SD配列が推定され,2ケ所パリンドローム様な領域が見られた。しかし,大腸菌のSOSレギュロン遺伝子のオペレーターに見られる共通配列(LexA結合部位)は見出されなかった。ペクチンリアーゼ遺伝子上流域のデレーションクローンを作成して,ペクチンリアーゼ遺伝子の発現を解析した結果,從来のSOS応答のようなリプレッサーによる制御ではなく,上流域に見出されるパリンドローム構造が関与した制御機構ではないかと推定した。ペクチンリアーゼI,II,IIIともに,それらの遺伝子を大腸菌に形質転換した場合,細胞外には分泌されないことが明らかにされた。一方,Erwinia carotovora Er株では,これらの酵素は細胞外に能率よく分泌された。その相違の解明は,今後の研究課題である。
|