研究概要 |
本研究者らは,Agrobacterium tumefaciensによる形質転換機構研究において形質転換制御物質を化学的プローブとして用いることが有用であると考え,形質転換制御物質を探索してきた。その際の生物試験法として,ポテトディスク法を用いてきたが,2週間以上を要するという欠点があった。そこで,形質転換をマーカー遺伝子(GUS,β-グルクロニダーゼ遺伝子)の発現で確認する新しい生物試験を確立した。数種の植物について,発現した酵素活性を蛍光測定したところ,タバコBY-2懸濁細胞で最も高い活性が確認された。このタバコBY-2懸濁細胞を用いる試験においてクラウンゴール形成阻害物質julimycin B-IIはED_<50> 1.5μgでGUS発現を阻害した。また,本試験では同時に植物毒性を判定できるため,特異的な形質転換阻害剤探索法として優れている。酵素活性測定法として,蛍光法に代わり組織化学的染色法を用いることにより,簡便な酵素発現の確認ができるようになった。さらに,タバコ以外にAgeratum,Petunia,Melastomaの懸濁細胞も本試験の宿主として有用であることを明らかにした。 本研究者らは,クラウンゴール形成阻害物質としてoxazolomycinを単離し,その阻害がA.tumefaciensに対する抗菌活性によるものであり,そのエステルは抗菌活性を失うがクラウンゴール形成阻害活性は保持しているという興味深い知見を既に得ている。oxazolomycin類縁化合物として報告されているcurromycin Bをcurromycin生産菌から精製し,そのdiacetateを調製した。Curromycin Bはクラウンゴール形成阻害及び抗菌活性(MIC 6.3μg/ml)を示したのに対し,そのdiacetateはoxazolomycinエステルと同様に抗菌活性を示さずクラウンゴール形成阻害活性のみを示したことから,curromycinエステルは特異的な植物形質転換阻害物質である可能性がある
|