研究概要 |
1.ヒトデ卵のDNA複製の時期:チミジンのアナログであるBrdUのDNAへのとり込みによってDNA複製の時期をしらべた。3分ほどのパルス標識で,BrdUが検出できるよう工夫した。第一回目のS期は雌性・雄性両前核のそれぞれで,核融合する前から始まった。成熟がすんでから受精した場合,融合核の中で雄性前核に由来すると思われる小部域が区別できた。この部域では,まわりの部域よりもS期がより永く続いた。S期の核のBrdUラベルのパターンと,クロマチン染色のパターンとをコンピューターによる画像解析によって比べたところ,両者は(雄性前核由来部域のS期延伸のときを除いて)常によく一致した。即ちDNA合成がクロマチンの全域にわたって同時に進行していることが示唆された。 2.人工的に融合したヒトデ卵母細胞での減数分裂の停止:ヒトデの未成熟卵母細胞及び成熟中の卵母細胞を融合させる手段を習得した。ヴァセッキー他(1986)によるポリエチレングリコールの使用に做い,少数の卵母細胞で融合を導くことができた。未成熟卵母細胞同士を融合させたあと卵成熟を誘起すれば,のちの極体放出は融合しない卵母細胞の極体放出と同じ頃におこるので,融合それ自体は減数分裂の進行に影響しないと判断した。減数分裂の進行が1回分だけずれているような融合体を作ったところ,おくれている側は第2極体を放出しないまま前核化した。減数分裂を終った核の前核化を促す因子が卵細胞質中に存在することが,この観察によって示唆された。
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