研究概要 |
イネ培養細胞からの2つの分化経路(不定胚形成と不定芽形成)の制御に関わるタンパク質および遺伝子を単離する目的で、以下の実験を行った。 1.2次元電気泳動による解析から、不定胚分化特異的に出現する4個のタンパク質(a,b,c,d)と不定胚分化と不定芽分化に共通に出現する2個のタンパク質(e,f)の存在を明らかにし、aについては部分アミノ酸配列を決定した。 2.糖タンパク質に着目し、ConAによるアフィニティクロマトグラフィーを行い、不定胚分化特異的糖タンパク質を新たに10個検出した。 3.分化を制御するような微量なタンパク質を濃縮するため、Immunosubtraction法を考案し、本培養系に適用した。すなわち、未分化カルスの全タンパク質に対する抗体をリガンドとしたアフィニティークロマトグラフィーを行ったところ、新たに、不定胚分化特異的タンパク質6個、不定芽分化特異的タンパク質2個、両分化過程に共通なタンパク質1個を検出できた。 4.微量な遺伝子発現をとらえ、その遺伝子をクローニングするため、従来にないdifferential screeningの方法を考案した。未分化カルス、不定胚分化カルス、および不定芽分化カルスから調整したcDNAをtemplateとしてPCRを行い、そのPCR産物をアガロース電気泳動で分離し、比較した。その結果、3種類のカルスのそれぞれに特異的なPCR断片を多数検出できた。特異的なPCR断片および、そのクローンを用いたノーザンブロット解析により、それぞれのPCR断片の特異性は、mRNAの特異性に対応するものであることを示した。さらに、不定胚分化特異的に発現するクローンは、植物体の組織の中では、接合胚で特異的に発現することを明らかにした。
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