研究概要 |
葉の老化に伴う葉緑体タンパク質の量的変動について,光標準照射下と弱光下で調べた。その結果,光合成のCO_2固定酵素のRubiscoと集光機能を担うLHCIIでは,明らかな違いがみられ,後者は弱光下で分解が著しく抑制され,集光機能/CO_2固定機能が光強度により適応的に変動していることが明らかとなった。またこの適応は,タンパク質の分解の制御によりなされていることが示唆された。 葉の老化に伴う窒素の転流に関連するGSI,GSII,Fd-GOGAT,NAOH-GOGAT等の酵素について,葉の一生における活性および個々の酵素タンパク質の変動,細胞内局在性,そのmRNAの量的変動等について調べた。 その結果,GSII,Fd-GOGATはRubiscoと同様な量的変動を示し老化に伴って徐々に減少した。一方GSIは葉の一生を通し,ほぼ一定量存在し,生体内における役割の違いが明らかとなった。また,NADH-GOGATは,特異的に若い未抽出葉に多いことが分った。そして,GSI,NADH-GOGAT共に維管束細胞に特に多く存在していることが分り,転流の際のloading unloadingとの関係が示唆された。 穂の穎花の発達に伴うタンパク質の集積について調べた。強勢穎果では出穂後すみやかにグルテリン,そのmRNA共に増加したのに対し,弱勢穎果では両者とも大巾に遅れて増加した。また乾物,totalNの蓄積も大巾に遅れていた。これらの遅れは,胚乳組織の発達の遅れに帰因すると考えられた。 葉緑体プロテアーゼについて,Rubiscoを基質に調べたところ,酸性側では比較的強い活性がみられたが,アルカリ側での活性は極めて弱いか全くみられなかった。CBZ-Gly-ProGly-Gly-Pro-Alo,を基質にエンドペブチダーゼ活性をみたところ,葉の全活性の40%が葉緑体に局在していることが,コムギ,エンドウで明らかとなった。
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