研究概要 |
樹木では心材化に先立って木貭化がおこる。両過程について検討した。 1.木貭化の生化学機構 ポプラの培養細胞および若枝から分離したペルオキシダーゼの数画分のうちには,シナピルアルコールの脱水素重合を効率よく触媒するアイソザイムが存在することを見出し、この酵素を単離して特性を解明した。 2.心材成分生産能力を持つ培養細胞と培養条件 スギ(Cryptomeria japonica)及びヒノキ(Chamaecyparis obutusa)のカルスには心材成分が検出されず,マツ属(Pinus)3種及びヒノキ科のCupressuslusitanicaの培養細胞は心材成分を生産した。後者はエリシターや無機塩の投与のような制御された条件下で,心材成分であるヒノキチオール(β-ツヤプリシン)をかなり多量(約10mg/g)生産し,心材化研究の好材料であると判断した。 3.心材成分生産を誘起するエリシター C.lusitanicaのカルスに作用させると心材成分を誘起するエリシターとして,エタノール沈殿,PNase処理,ゲル濾過及び銅錯体形成を組み合わせて高活性のグルコマンナン画分を単離した。 4.心材成分生合成経路の証明 C.lusitanicaの培養細胞にエリシターを作用させると同時に,^<14>C-メバロン酸,^<14>C-グルコースまたは^<14>C-マロン酸をショットガン法で投与して培養し,心材成分であるヒノキチオールがメバロン酸経路により生合成されることを証明した。 5.心材成分生合成酵素の検討 C.lusitanicaカルスの無細胞抽出液から,ヒノキチオールの生合成に関与する酵素を単離する試みには残念ながら成功していない。酵素の単離ならびに辺心材境界部位での存在証明などが残された課題である。
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