研究概要 |
スサビノリのフリー糸状体の凍結保存法の開発を試みた。まず、二段階凍結法による液体窒素中での凍結保存を行った。50%海水に0.5Mソルビトールを加えた基本液に細断したフリー糸状体を懸濁させ,基本液に20%DMSOを加えた液を細胞懸濁液と同量15分かけて徐々に加えた。0゚Cで45分平衡させた後,プログラムフリーザー中で0.1〜1゚C1分の速度で-40°Cまで予備凍結し,液体窒素に浸して急冷した。保存は液体窒素ジャー中で行った。解凍は40゚Cのウォーターバス中で行った。その後,海水で徐々に希釈し凍害防御剤を除いた。このような方法により凍結保存したフリー糸状体の生残率は約60%であり,これは凍結保存300日後でも低下しなかった。凍結保存されたフリー糸状体は成熟し,葉状体を形成した。プログラムフリーザーによる予備凍結を市販フリーザーにより1゚C/分以下の速度でゆッくりと凍結する方法に換えても同様の結果が得られた。本法はアマノリ属の他,数種の大型藻類や微細藻類にも応用できた。次に水産植物の機能開発についてであるが,海水・汽水域から計39株の光合成非硫黄細胞を分離し,その水素発生能を検索した。その中で、汽水域の泥のサンプルから単離されたTU-PSB105-1株の水素発生能についてさらに詳しく調べた。その結果,検索条件での水素発生速度は80μl・(mg prot)^<-1>・hr^<-1>であったが、培養時点での窒素源や源化ナトリウム濃度の選択により活性が上昇した。また,水素発生に関する最適pHは7.0〜8.0であった。水素発生の活性は塩化ナトリウム濃度の影響を強く受け,0.5%(5g/l)の塩化ナトリウム濃度では160μlH_2*(mg prot)^<-1>*hr^<-1>の活性が観察された。今回の研究で得られたTU-PSB105-1株の活性は,これまでに報告された最大水素発生活性の約半分であったことから比較的高い水素発生能を示す株であると考えられた。
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