研究概要 |
イヌ各組織の^<125>I-VIP結合実験の結果,イヌの肝臓と大腸粘膜で分析可能な量の^<125>I-VIP結合が観察された.イヌ肝臓粗製膜標本へのVIP結合はすばやく生じ,飽和性,可逆的,かつ親和性が高く,受容体への結合と考えられた.GTP,GTPγs及びGDPは同じ濃度範囲で^<125>I-VIP結合を抑制したが,GDPβsとGMPはその力価は弱く,ATPの1mMでも抑制効果を示さなかった.非標識ペプチドによる^<125>I-VIP結合阻止実験の結果,ペプチドの結合力価はVIP>pituitary adenylate cyclase activating peptide(PACAP)27>PACAP38>>peptide histidine isoleucine(PHI)=secretinであった.PHIとsecretinはイヌではVIPよりも5000倍と極端に力価が低く,イヌ肝臓のVIP受容体のVIP認識部位はいままで報告されたVIP受容体と大きく異なっていると思われる.Ishiharaら(neuron,1992,8,811-819)が,ラット肺からVIP受容体タンパク質のcDNAをクローニングした.そこで,VIP結合特性が大きく異なるイヌ肝臓VIP受容体の遺伝子をクローニングするため,ラット肺VIP受容体cDNAよりプライマーを合成し,ラット肝臓VIP受容体をコードするcDNAを鋳型としてPCR法により遺伝子増幅をおこないプローベを作成した.イヌ肝臓cDNAライブラリーのスクリーニングの結果,4個の陽性クローン(約1-1.5kb)を得た.その中の1クローン(#35)はラットパラサイロイドホルモン受容体遺伝子と高度なホモロジーを有していた.#102クローンはラットVIP受容体遺伝子の膜貫通領域(M1)と類似のアミノ酸配列をもつことが明らかとなった.残りのクローン#201と#513に関してはアミノ酸の類似性は余り大きくなかった.#102クローンがイヌVIP受容体遺伝子をコードしている可能性が考えられるため,さらにデリーションクローンを作成し,この遺伝子の全塩基配列を調べている.
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