研究概要 |
従来より我々は、ベータ受容体サプタイプの選択的刺激によってICaとIKに対する増強作用に差異のあることを明らかにし,両者の細胞内情報伝達機構が異なっていることを示唆してきた(J.Pharmacol.Exp.Ther.254:142-146,1990)。本研究では,非特異的なアデニル酸シクラーゼ刺激薬であるフォルスコリンを用い,ICaとIKの細胞内情報伝達経路の差異についてさらに検討を加えた。まず、フォルスコリンのアデニル酸シクラーゼ結合部位を明らかにするために,完全電離型フォルスコリン誘導体を合成し、その結合部位が細胞膜内側にあることを明らかにした。次に,水溶性フォルスコリンを用いて非特異的にアデニル酸シクラーゼを活性化し、IKの増加とICaの増加を詳細に検討したところ,IKの増加がICaの増加より著明であり、ベータ受容体を刺激したときの逆になることが明らかとなった。即ち、ICaとIKチャンネルに関連する細胞内情報伝達経路に相違のあることが示唆された(心臓,25(Suppl.3):15-17,1993.;Am.J.Physiol.1994(in press)). また,本研究補助金によって購入した顕微分光蛍光測定装置を用いて,単離心室筋細胞内カルシウムイオン濃度とIKの関連の回析を計画しているが,その予備実験で,ヒト大動脈培養血管内皮細胞をヒスタミンやATPで刺激したときに起こる,細胞内カルシウム濃度の上昇には,細胞内の貯蔵部位からの放出と細胞外からのカルシウムイオン流入が存在し,後者は従来他の種や臓器で明らかにされているようなカリウムイオン依存性ではなく外液のクロライドイオン存在していることを発見し,その解析を行なった(Eur.J.Pharmacol.(Mol.Pharmacol.Sec.)266:213-218,1994)。
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