研究概要 |
性ホルモンによる子宮,前立腺細胞の増殖は、性ホルモン誘導性の増殖因子によっておこるのではないかと考えられてきたが、分子レベルでは実証されていない。その最大の理由は、無蛋白培地における性ホルモン依存性増殖系がなかったからである。我々は無蛋原培地でアンドロゲン依存性増殖を示すクロ-ン化されたマウス乳癌(SCー3)細胞系を樹立し、この実験系に使用した。 1.SCー3の無蛋白培地における増殖は、生理量のアンドロゲンによって著明に促進された。増殖因子のなかでは、線維芽細胞増殖因子(FGF)だけがSCー3の増殖を促進した。1GFーI,1GFーII,EGF,TGFーα,TGFーβ,PDGF,NGFは無効であった。 2.SCー3をアンドロゲンと共に培養した培地には、ヘパリンセファロ-ズに吸着し、1N NaClで溶出されるFGF様因子が存在した。アンドロゲン(-)、アンドロゲン+抗アンドロゲンの状態ではSCー3はこの因子を分泌しなかった。また、FGF抗体と反応した。 3.SCー3の分泌するアンドロゲン誘導性のFGF様因子は、SCー3のFGF受容体と結合した。また、SCー3のアンドロゲンとFGF誘導性の増殖は、抗FGF抗体で、同様に著明に抑制された。 4.SCー3がアンドロゲン誘導性に産生するFGF様因子を、2度のヘパリンセフアロ-ズカラム、逆相高速クロマトグラフィ-で精製し、SDSーPAGEにかけると分子量3万の蛋白であった。この蛋白の一部のアミノ酸配列を決定し、cDNAをクロ-ニングし、配列を決定した。分子量3万で、FGFと相異しシグナルペプチドを有し、basicFGFとのホモロジ-は30%、その他のFGFfamibyとの相同性は少ない因子であった。このcDNAを発現させて、確認する必要がある。
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