研究概要 |
本研究は,蠕虫感染宿主に特徴的なIgE産生について,その感染防御および好酸球増多におよぼす役割をinvivoの実験系で検討することを目的とした。実験系は,先天性および後天性IgE単独欠損マウスとIgE産生対照マウスに感染を行い,感染防御能を比較するものである。蠕虫抗原に特異的なIgE抗体は,小形条虫成虫の消化管からの排除,旋毛虫筋肉内幼虫の感染防御,肝臓における日本住血吸虫の虫卵結節形成に関与することが明らかとなった。感染防御のIgE依存性は,宿主IgE産生能の影響を受け,IgE応答性が高い場合にのみ認められる。また,小形条虫と日本住血吸虫卵の系では肥満細胞の関与も示された。しかしながらIgE欠損マウスでも感染防御がみられることから,IgE抗体は感染防御の必須因子とはならない。 マレー糸状虫,ネズミ糞線虫,コスタリカ住血線虫,Nippostrongylusの感染では,非特異IgEのみが産生され,蠕虫抗原特異IgE抗体は検出されない。これらの感染系で非感染時の10〜50倍にも達する非特異IgEは感染防御に直接関与することはなかった。しかし非特異IgEを多量に移入したり,Nipposttongylusを感染させることで高IgEとしたマウスでは、蠕虫抗原特異IgE抗体による感染防御が成立する旋毛虫感染に対して感染防御能の低下がみられた。この結果から非特異IgEは,蠕虫抗原特異IgE抗体による感染防御機構を干渉し,感染の成立を容易にする可能性が示された。蠕虫は非特異IgEを産生することでIgE抗体による排除機構から逃避できることになる。 好酸球増多においては,蠕虫抗原特異IgE抗体ならびに非特異IgEの関与は否定的であった。むしろ蠕虫感染によって誘導されたT細胞からのIL-5が好酸球増多の主要な因子と考えられる
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