研究概要 |
本研究の目的はヒト脳性Naの利尿ペプチド(BNP)の特異的な測定法を確立し,各種心疾患における動態を解析することによりBNPの臨床的意義を明らかにすることである。ヒトBNPに特異的で鋭敏なradioimmunoassayを確立し,ヒト血中BNPの測定が可能となった。正常人の血中BNPは2-4pg/mlと低値であり,ANPの約5分の1であった。血中BNPは高血圧,慢性腎不全,急性心筋梗塞,急性呼吸不全,うっ血心不全といった病態で上昇し,特に后3者ではANPより高値を示した。血中BNPは心不全の重症度に並行して上昇し,左室拡張終期圧と相関したが,血中ANPは肺動脈圧や全房圧と相関した。したがってANPは主に心房から由来するのに対して,BNPは主に心室から由来する心臓ホルモンである可能性が示唆される。また血中BNPは心疾患の予后とも関係し,予后不良の症例程高値で遷延した。すなわち血中BNPは予后判定のコーカーになるものといえる,以上の研究成績からBNPは急性ストレスに対して病態下では心室から専ら分泌され,これは前および后負荷を軽減するための心の代償機構の一つとして作動している可能性が示唆される。
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