研究概要 |
1.筋組織の違いと緩和時間T_1,T_2との関係について、invitroでの測定により検討した。対象はICRmouseで、typeIとしてひらめ筋、typeIIとして前脛骨筋を使用した。装置は機器分析用NMRスペクトロスコピー(90MHzFx90A,JEOL)で、T_1は反転回復法、T_2はspinecho法によった。T_1は、typeI:1.03±0.03sec(n=12),typeII:1.04±0.02sec(n=11)と統計的有意差は認めないものの、ややtypeII筋線維のほうが長い傾向が認められた。T_2は2成分から成り、早い成分T_2fはtypeI:33.2±1.4msec,typeII:34.4±0.9mesc、遅い成分T_2sはtypeI:67.9±5.3msec、typeII:75.1±6.4msecと、何れもtypeII線維の方が有意に延長していた(T_2f:p<0.05,T_2s:p<0.01)。水分含有量と強い相関の認められるT_1に有意差が認められなかったことから、筋線維内の巨大分子の構造的違いが緩和時間の差に関係すると考えられた。2.invivoで筋肉の緩和時間測定をするために生体計測用NMR装置(2.0T,30cm径、BEM250/80、大塚電子)において、表面コイルを用い、観測領象での緩和時間T_2を、Hahnのspinecho法にデプスパルスを用いて測定した。ファントムでは、flipangle(θ)を変えることにより測定した各層のアルブミン水溶液のT_2は機器分析用NMR装置で測定した値と同様であった。Spinecho法と簡易デプスパルス法で求めたファントム3層目(10.5mm)のT_2は簡易的なデプスパルス法の方が正確な値を示した。このパルスを用いて、ヒトの前腕筋肉のT_2を求めた。T_2はinvitroの値に比べ、やや短く、これは生体組織の不均一性によると考えられた。 3.invitroで乳酸(1,0.1,0.01,0.005M)の測定を試みた。表面コイルを用い、水の信号を抑制するため、1,3,3,1パルスを用いた。0.01Mまでは乳酸のピークを検出できたが、それ以下では、濃度と信号強度が比例しなかったこと、水の抑制がまだ不十分であることが問題点である。
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