研究概要 |
本年度の研究は当初の計画に従い、多数保存中のミトコンドリア脳筋症の生検骨格筋のミトコンドリア異常の有無をスクリ-ニングした。ミトコンドリアDNAのSouthern blot解析を行いその中からKearnsーSayre症候群5例にそれぞれ3.4,5.6,5.5,9.2,5.0kbのlarge scale deletionを有する例をまず見いだした。これらの5症例の欠失部分のDNAをシ-クエンスし欠失断片の塩基配列を決定した。その結果3例は5、10、13bpの反復配列を見いだされそれらの部位はいずれもミトコンドリアDNA複製の際に一本鎖DNAのまましばらく留まる部分に相当していた。一方残りの2例 は反復配列を見いだすことはできず欠失部分はH鎖またはL鎖の複製開始点に近接していた。以上の結果によりミトコンドリアDNAが欠失する機序は少なくとも2つあることが明らかになった。次にlarge scale deletionを認めなかった2例のKearnsーSayre症候群の骨格筋ミトコンドリアDNAをPCRで増幅したところ欠失を有するミトコンドリアが存在している事が明らかになった。その欠失断端の塩基配列をシ-クエンスしたところ2例とも反復配列を有する欠失であった。そこで生検骨格筋を用いてRNAーPCR法にてRNAの分析を行った。RNAは不安定でありさらに分析材料の保存条件もRNAの保存状態に関係してくるため現時点では分析条件の設定をしている段階である。予報的ではあるが欠失部分は転写されていると考えられる結果を得ているが尚検討が必要な段階である。今後より詳細な分析を予定している。
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