研究概要 |
アレルギー炎症の成立に重要な役割を果たす好酸球の、増殖、分化、活性化機構を明らかにする目的で、ヒト好酸球性白血病細胞株EoL-1,EoL-3,および,正常ヒト好酸球を用いて、(1)好酸球性白血病細胞分化因子の性状、(2)好酸球の細胞接着分子発現、遊走能、IgG受容器発現の調節機構を解析した。その結果、(a)ヒト成人型T細胞性白血病細胞株HIL-3はEoL-1細胞を骨髄芽球から好酸球へと分化させる因子を産生しており、この因子がこれまでに明らかにされている因子とは異なる分子量30〜40Kdの糖タンパクであること、(b)EoL-1細胞はcAMPによるプロテインキナーゼAの活性化により、好酸球遊走因子であるPAF,fMLP,C5aに対する反応性を獲得すること、(c)EoL-3細胞における細胞接着分子LFA-1やICAM-1の発現は、ガンマ-インターフェロン(γ-IFN)とフォルボールエステルにより、それぞれ異なる作用機序を介して調節されていること、(d)正常末梢血好酸球および臍帯血単核細胞よりIL-5による培養で誘導された好酸球はIgG受容器(FcγR)のうちFcγRIIを発現しており、FcγRIやFcγRIIIの発現は無いか、あったとしても極めて少ない。末梢血好酸球ではγ-IFN刺激によりFcγRIIIBが発現し、cAMPはこの発現を抑制するが、IL-5により誘導された好酸球ではγ-IFNによるFcγRIIIB発現が見られないこと、(e)EoL-1細胞,EoL-3細胞も正常好酸球と同じくFcγRIIのみを主に発現しているが、正常末梢血好酸球と異なり、γ-IFNとcAMPの両者で刺激された時のみ、FcγRIIIBを発現することが判明した。これらの成果により、好酸球の増殖、分化、活性化機構がより明らかとなった。
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