研究分担者 |
渡辺 明子 東京医科歯科大学, 医学部, 技官 (40210992)
山田 和男 東京医科歯科大学, 医学部, 医員
石丸 昌彦 東京医科歯科大学, 医学部, 助手 (50242219)
車地 暁生 東京医科歯科大学, 医学部, 助手
渋谷 治男 東京医科歯科大学, 医学部, 助教授 (10158959)
南海 昌博 東京医科歯科大学, 医学部, 助手 (20218069)
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研究概要 |
慢性分裂病死後脳において、以前同じ脳で見出したカイニン酸の増加に加え、NMDA受容体の増加および今回の研究でNMDA受容体のアロステリック部位であるグリシン結合部位が増加していることが分かった。多くの脳部位でグリシン結合部位の顕著な増加が認められたが,グルタミン酸の含量との間に多くの部位で有意な負の相関を認めた.また増加がみられた脳部位は,一次感覚野とその連合野および三次連合野であり,これは分裂病の異常として注目されている.認知障害者で,感覚情報の処理統合に関する部位であることが興味深く思われる. さいごに,グルタミン酸ニューロンの低活性が生じる機序についてドーパミンニューロンとの関連のもとに考えてみたい.以前よりスライス実験で,ドーパミンやそのアゴニストが線条体からのグルタミン酸遊出を抑制することが示されていたが,最近マイクロダイアリシス法によりこの事実が確認された(Yamamoto,D.K.et al.,J.Neurochem.,58:1736,1992).われわれの分析した慢性分裂病脳では,グルタミン酸ニューロンの低活性を思わせる所見と同時に,ドーパミンの過剰活動を示唆するドーパミンD_2受容体の増加や,チロシン水酸化酸素活性の上昇も見出されている。 臨床的に考えると,発病当初より抗ドーパミン性抗精神病薬が全く無効で,急速に慢性病像に移行する症例もあるので,分裂病のなかには興奮性アミノ酸ニューロンの機能低下が一次的に生じる例もあるものと思われる。一方,かなりの症例は,抗ドーパミン薬によく反応する急性病像を反復しているうちに慢性病像へ移行する.このような例では脳内で持続するドーパミン過活動が,グルタミン酸ニューロンの活動を抑制するという生化学的機序を推定することができるのではなかろうか.
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