研究概要 |
1)我々の確立した鎖肛ブタ2家系の維持を順調に行った。その内に1家系に先天性横隔膜ヘルニアが多発したので、救命手術を行ってその家系樹立にも努めている。鎖肛と横隔膜ヘルニアの両疾患をもつブタ2頭も救命できている。遺伝学的には両者に関係のない事が証明できている。 2)実験計画通りに2家系内の計画的交配に基づく妊娠に人工流産を行い、鎖肛ブタ胎仔をえて来た。また妊娠20日以前の流産は技術的に成功していない。 3)胎仔の矢状断連続切片標本を正中部を中心に作成して来た。但し顕微鏡画像の三次元立体構築法による解析を行うためには、一体について700〜1000枚の連続標本作製が必須であった。 4)鎖肛の初期発生の起序を明らかにするべく、発生学的な検討を続けて来た。三次元立体構築法の技術開発を続けており、これを用いて,非常に有効な発生学的な解析が行えたと考えている。国際学会にも報告し、第25回太平洋小児外科学会ではBest PosterPrizeを受賞した。 5)鎖肛発生原因は総排泄腔の分離異常による事を発生学的に明らかにしたが、この際cloacal plateの役割の重要性を示すことが出来た。 現在までの教科書には記載されていない事実である。また性差による鎖肛病型の違いを明示出来た。 6)鎖肛の進化学的な側面を解明するべく、検討を行った。進化学を研究すると共に、実際に魚類,両生類,爬虫類,鳥類,原始哺乳類,高等哺乳類と系統発生学的な考えに基づいて解剖学,組織学的検討を行った。高等哺乳類が進化の過程で獲得した総排泄腔分離の遺伝子の病的欠落によって鎖肛が発生するのではないかという考うに至った。鎖肛の重症病型は爬虫類,下等哺乳類などの総排泄腔をsimulateすると理解しやすい事を明らかにした。これらを報告書にまとめた。
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