研究概要 |
目的:固形腫瘍の直流の通電療法の臨床応用をおこなうための基本的原理の解明と至適条件を見出す事。 方法:固形腫瘍モデルとして吉田肉腫の細胞を1X106個を生後8週間目の雄呑竜ラット(体重300-350gm)に皮内に注射し、5日目からPentobarbital Sodium麻酔下に、白金電極を使って0,0.5,1,3mAの各群に対し、1時間/日、4日間連続通電療法を行う。腫瘍径は毎日測定し、治療の色々の段階でラットを剖検し、その病理学的検討を行った。最も良い治療効果を認めた1mA通電療法群でCV-3611(アスコルビン酸の誘導体)を前投与し、その効果を見た。さらに腫瘍の縮小の始まった新鮮標本よりDNAを抽出し、Wyllie等の方法によるアガール・ゲル電気泳動を行った。又新鮮標本をNick-endラベリング法で核の染色を行った。 結果:1)1mAの通電療法で腫瘍の完全消失を80%以上に認めた。2)腫瘍が大きく成ってから治療を始めたものは治療効果が悪くなる。3)病理組織学的検討では効果のあるものでは細胞が同心円上に、又は帯状に壊に陥って行く像が観察できた。4)SODの通電療法前の投与によって治療効果が抑えられる事からフリーラジカルが通電療法に関与していることが考えられる。5)DNAの電気泳動ではラダーパターンが認められなかったが、DNAのFragmentationが認められApoptosisが考えられる。 考察:固形腫瘍の通電療法は条件が旨く会えば、極めて良い治療効果が期待出来る。その治療原理については諸説あるがその何れも旨く現象を説明できるものではない。病理適検討からやけど現象や、pHの変化によるものではない。放射線と同じ様なApoptosisが最も現象と合致する。何れにせよその治療効果は大いに期待できる。事実日本以外の世界各地ですでに4,000例程の臨床症例になされCR,PR合わせると60-70%の治療効果あげており、速やかな我が国での臨床応用が切望される。
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