研究概要 |
【目的】心臓移植後の急性拒絶反応の早期診断法として従来の心筋生検に代る,化学発光法の手法を用いたリンパ球活性を定量化し,その上昇をとらえる手法の確立を目的とした。 【対象と方法】ドナ-にACIラット,レシピエントにLEWラットを用いOnoーLindsey法に準じて腹腔内異所性心移植を施行。術後1,3,4,5,6,7日目に犠牲死せしめ,血液より顆粒球,リンパ球を分離,これらの活性変化を(1)PMA,(2)Zymosan induced chemiluminescenceにより測定した。同時にHE染色による移植心心筋生検の光顕所見をマ-ガレット-バ-ミンガムの判定基準に従い観察,拒絶反応の程度との相関を検討した。活性変化は,移植前のLEWラットの顆粒球,リンパ球の活性をコントロ-ル値とした。又,ドナ-,レシピエント共LEWラットを用いた群で同様の測定を行った。 【結果】顆粒球の活性変化は,PMA,Zymosan両方の手法で,移植後第1病日で術前値の150〜200%に上昇,LEWラット間の移植群は急性拒絶反応がおこらない為第5病目に120%程度にまで下降した。一方ACIーLEW間の移植群は3〜6日に急性拒絶反応が確診され,この時期に活性が140〜180%と再上昇を認めた。リンパ球の活性はPMA刺激において顆粒球と同様の傾向を示したが,上昇の範囲は100〜130%程度にとどまった。 【考察】顆粒球の活性変化は,急性拒絶反応の進行と共に上昇したが,病理学的に徴候が出現する3〜4日の時期は,手術侵襲による活性の上昇と干渉し合い,拒絶反応の早期診断の点では鋭敏度に問題があると思われた。リンパ球の活性変化は,リンパ球自身過酸化水素を持っているかどうか議論の分かれる所であり,持っていたとしても顆粒球よりははるかに少ないと思われ,膜刺激の方法を工夫するか,人の血漿と混和し,何らかのmediaterを介した変化をとらえる必要があると思われた。
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