研究概要 |
閉経の骨に与える影響を調べるためにビーグル犬を用いた動物モデルを作成し組織形態計測学的に観察した。ヒトでの組織形態学的変化を解明するために動物実験モデルを作成することを目的とした本研究では,当初の研究予定を終了してほぼ目的を達成することができた。 結果 1)ビーグル犬での卵巣摘出実験によれば、卵摘後の骨動態は当施設で得たヒトの閉経後の骨変化と本質的には同一であるようにおもわれたが、卵摘直後に骨芽細胞機能、とくに基質の産生障害が起きる時期が在ることが示された。ヒトにおける骨組織形態計測の結果では,閉経周辺期の骨芽細胞機能の障害は基質の産生のみならず石灰化においても認められた。このような変化は女性のみに認められ男性には認められなかった。 2)本モデルにおいて閉経後は石灰化や基質産生に障害は認められず,閉経周辺期よりも青年期に近い状態であった。したがって骨量の減少は閉経周辺期に多く閉経後は安定していると考えられ,人での骨組織形態計測によっても同じ結果が得られた。 3)骨粗鬆症の患者群では,男性は極めて小数であることや初発症状は閉経周辺期に出現すること,治療によっても骨量の増加はほとんど見られないことなどから,発症原因は閉経周辺期前の骨量の多少,閉経周辺期の骨芽細胞機能障害による骨減少,閉経後の骨芽細胞の機能回復の障害などが考えられる。 4)骨粗鬆症では骨皮質が菲薄化し,骨強度が減少して骨折を生じることが知られている。ビーグル犬の肋骨を用いた実験ではオステオン単位で骨基質の産生が低下し,皮質骨から粗な海綿骨へと変化して粗鬆化が生じるというメカニズムが判明した。
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