研究概要 |
平成3年の研究ではセラミックス材料を埋入したまま、硬組織の超薄切片を作成して、各種セラミックス材料と骨の界面を透過電顕を用いた観察が可能となり、埋入8週での材料と骨の界面を観察した。その結果、surface active bioactive ceramicsと言われるBioglass,Ceravital,A-W glass-ceramicsでは材料表面に0.5から1.0ミクロンの結晶性の低い水酸アパタイトの層を形成し、この層を介して骨と結合していることを観察した。平成4年の研究ではこのアパタイト層の形成を見るためにより早期の段階で経時的に材料を取り出し観察を行った。この結果、A-W glass ceramicsでは材料埋入後、3日では材料表面にはアパタイトの反応層は形成されず、7日で形成が確認された。また、この段階では材料表面での骨形成は起こっておらず、アパタイトの反応層の形成には骨細胞は関与せず、生体組織液中での材料表面の化学変化によるものと考えられた。この所見はsurface bioactive ceramics(Bioglass,Ceravital)でも同様に認められた。また、時間経過とともに、表面だけでなく、材料表面から材料の中に向かって、表面で見られると同じアパタイトが形成されるのが観察された。材料内でのこの変化の幅はBioglass,Ceravital,A-W glass-ceramicsの順で大きかった。これまで、走査電顕で材料表面にCa,Pの増加するいわゆるCa-P rich-layerが認められたが、この層の幅は8週のA-W glass-ceramicsで20ミクロン以上となり、透過電顕で認められるアパタイトの反応層の幅1ミクロン前後と食い違っていたが、捜査電顕では材料の内部に形成されるアパタイト層を同時に観察していたものと解釈された。 透過電顕を用いた本研究により、surface active bioactive materialと骨との結合機序がより詳細に解明され、透過電顕が材料と骨の界面を研究する上で有力な研究手段であることが実証された。
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