研究概要 |
血管トーヌスに及ぼす内膜,外膜(神経)及び血液細胞とくに白血球の作用を低酸素ないしはアシドーシスなどの病態に関連して検討した.血管は低酸素負荷により収縮した.内膜除去により低酸素性収縮は一部減弱し,また内膜のある血管では,cyclooxygenase阻害薬で一部拮抗されたことから,cyclooxygenase関連のプロスタノイドが低酸素が刺激となって内膜から放出されることが明らかとなった.一方,内膜と外膜両方を除去すると低酸素性収縮が完全に消失した.以上の結果から,低酸素時の血管反応に内膜だけでなく外膜も関与することがはじめて明らかになった.また,アシドーシスは血管収縮を抑制するが,その抑制は血管収縮物質により抑制が異なるだけでなく,内膜がその抑制を助長することが明らかとなった.血液細胞も血管トーヌスに影響を及ぼす.本研究では病態に深く関与する白血球の血管に及ぼす影響について検討し,白血球は血管内膜を介して血管を弛緩することがわかった.しかし,白血球が血管内膜を介して放出する物質について,種々の拮抗薬を用いて検討したが,現在のところその本体は不明である.内膜はshear stressを受けると弛緩物質を放出するという事実を応用して,ヒトで内膜の機能を検討したが,血管障害のある場合では血流の回復が遅いことが認められた.内膜からどのような拡張物質が放出されるかは今後の残された課題である.本研究の結果から,血管トーヌスの調節に血管内膜,外膜及び血液細胞が相互に作用すると同時に,低酸素・アシドーシスがこれらの作用を複雑に修飾していることが明らかとなった.
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