研究概要 |
研究1:プロスタグランディンE1(PGE1)の容量血管に対する作用(Journal of Anesthesia 1993,in press) 肝臓の虚血障害を軽減する作用を持つといわれるPGE1の全身の容量血管に対する作用をラットを用いて検討した。血管容量の検討は平均循環充満圧を測定することによって可能となる。我々はPGE1投与による平均循環充満圧の測定を行なった。PGE1投与により血圧が低下するが、血圧低下を来たしたときのPGE1による平均循環充満圧の低下は、静脈を主に拡張するといわれるニトログリセリンによる低下と比べて、有意に軽度であった。この結果は、PGE1は容量血管を拡張させるが、その程度はニトログリセリンよりも小さいことを示唆している。 研究2:高炭酸ガス血症時の内臓血流分布および容量血管の変化(Can.J.Physiol.Pharmacol.70,1992,1032-1039) 人工心肺を装着した犬を用いて、高炭酸ガス血症、低酸素+高炭酸ガス血症による内臓血流の分布と血管容量の変化を検討した。高炭酸ガス血症時には非内臓血管床から内臓血管領域に血流分布が変わるが、低酸素+高炭酸ガス血症時には逆に内臓血管床から非内臓血管領域に血流分布が変化した。血管容量は両者で著明に減少した。 研究3:カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)の圧受容器反射に及ぼす影響(Am.J.Physiol.263,1992,R874-R879) 血管拡張作用を持ち、神経性循環調節を行なっていると考えられるCGRPの動脈圧受容器反射に及ぼす影響を家兎を用いて検討した。大動脈神経、腎交感神経活動を記録しCGRPとニトロプルシッド(SNP)による血圧低下時の神経活動の変化を比較した。CGRPとSNPによる血圧低下時の大動脈神経活動の減少には両者で有意な差は認めなかった。血圧低下に伴う反射性の腎交感神経の上昇はCGRPの方がSNPよりも有意に大であった。以上より、CGRPは中枢性に動脈圧受容器反射による腎交感神経活動の調節を促進していることが示唆された。
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