研究概要 |
県下32産科施設の協力の下に,1)HCVキャリアステートの診断法(HCV関連抗体:C-100,N-14,アボット第二世代PHA及びPCRによるHCV-RNAの確認検索),2)妊婦におけるHCV保有状況及び所謂サイレントキャリアの存在確認,3)HCVキャリア妊婦家族におけるHCV集積状況,4)夫妻間感染及び母児垂直感染の可能性について検討し,県妊婦におけるHCV関連抗体陽性者は約1.0%,その内30%がHCV-RNA陰性でサイレントキャリアの可能性があり,真のキャリア率は約0.7%である事,その6割が何らかの肝機能異常を示す事,遺伝子亞型はII型が約7割を占める事,又,キャリア妊婦の家族におけるレトロスペクティブな調査より夫妻間感染は約12.5%に生ずる事等を報告してきた。 本年度はHCVの母児垂直感染に焦点を合わせ,以下の点を明らかにした。 1)HCV-RNA陽性キャリア妊婦の出生児59名をプロスペクティブに最長47週までフォローアップし,そのうち5名(8.5%)の児にキャリア化を認めた。2)5名中4名の児は母と遺伝子亞型が一致,残り1名が母の遺伝子亞型の他に異なる一亞型が検出され,重複感染の可能性も示唆された。3)児血中HCV関連抗体価は生後6ケ月まで漸減し,遅くとも12ケ月までには消失したが(経胎盤移行抗体),キャリア化の5名の児では抗体価が一旦下降後再上昇し(自前の抗体産生),以後持続した。4)5名中4名(80%)の児は最長47週までHCV-RNA陽性が持続,1名のみが生後8ケ月まで続いたHCV-RNA陽性が生後12ケ月より陰性化し,24ケ月まで陰性が持続している。5)HCV-RNA陽転児の80%に肝機能異常が認められた。
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