研究概要 |
我々は先に7名のアルツハイマー型老年痴呆(SDAT)婦人に結合型エストロゲンを1日1.25mg、6週投与し、臨床症状の改善を明らかにした(1989,J Steroid Biochem34;521)。本研究ではこのエストロゲンの作用機序を明らかにすべく基礎的研究を行った。 A,前眼房内移植基底核組織へのエストロゲンの影響 胎生19日令のラット胎〓(雌)の間脳対角体を別のラット(雌)成獣の前眼房内へ移植、そのacctylcholinesteraseへのエストロゲンの効果を非投与と比較したところ、明らかにエストロゲン投与により著増した(1992,J Steroid Biochem Molec Biol 41;633)。エストロゲンが間脳細胞を刺激、代謝を活発化させ、その効果がコリン作動性線維を経て大脳皮質へ投射され、影響を与えることが考えられる。 B,視床下部細胞の生き残りに対する影響 生後1-2日のマウス間脳より、グリア細胞を選択的に培養した。3代培養の段階でestrone sulfate(E_1-S)を種々の濃度で添加、さらに4日間培養した。E_1-S添加群では、細胞分化の促進されたStel late typeの割合が濃度依存性に増加した。in vivoにおいてもエストロゲンがより分化したアストログリアを増加させ、機能を高め、ひいては神経細胞機能の維持・増進することが想像された(日本更年期医学会雑誌掲載予定) C,SDATに対する分子生物学的アプローチ 準備実験として分子生物学研究を行った(1993,J Kyoto Pref Univ Med 102;153) さらに、ダブルブラインド方式にて結合型エストロゲン1日1.25mg、3週間あるいはブラセボを投与し、記憶障害を中心とした臨床症状の改善を確認した(日本更年期医学会雑誌掲載予定)。
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