研究概要 |
緑内障では明度識別視野に異常が検出された時点では,すでに約50%の視神経線維の障害が認められるとの報告があり,より鋭敏で特異的な検査方法の開発が必要と考えられる。申請者は1987年よりゴールドマン視野計を改造した手動の静的フリッカー視野計を開発,フリッカー視野検査が早期緑内障の視野異常を鋭敏に検出しうることを証明してきた。本研究では,より実用的な自動フリッカー視野測定法の開発を目的とした。視野計にはINTERZEAG社製OCTOPUS1-2-3およびremote software packageを用い,我々がIBMパーソナルコンピュータ上で独自に開発したフリッカー視野測定プログラムにて測定を行なった。 ます正常被検者100名に対し本検査を施行し,フリッカー視野の正常者における生理学的特性を調べた。今回の測定条件では,正常者のフリッカー視野は30Hz前後のほぼ平坦な形状を呈した。また標準偏差は,固視点で最も小さく,周辺にいくにつれ大きくなる傾向を示した。平均CFF値は年齢とともに低下する傾向を認めた。またshort term fluctuationは,2〜3Hzにピークをもつ分布を示し明度識別視野測定のほぼ2倍の値を呈した。catch traialsは,15%以下を呈し,被検者の応答の信頼性は従来の自動視野計と同様に良好であった。 つぎに早期緑内障症例59眼を対象とし従来の明度識別視野測定との比較検討を行った。測定結果の解析には,正常被検者を対象とした研究にて得られた年齢別正常値を用いた。明度識別視野測定にはOCTOPUS201プログラムNo.32を用いた。フリッカー視野検査がより鋭敏に初期緑内障性視野変化を検出したものが37眼,明度識別視野検査とほぼ同等が10眼,明度識別視野検査がより鋭敏であったものが9眼であった。今回われわれが開発した自動静的フリッカー視野計は,早期緑内障性視野変化の検出において極めて有用な検査法であることが確認された。
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