研究概要 |
シェーグレン症候群は口腔乾燥症(ドライマウス)眼乾燥(ドライアイ)を臨床的主徴とし、やがて慢性関節リウマチを始めとする多彩な全身症状をきたす難治性の自己免疫疾患とされているが、現在までその病因は不明のままであり好適な疾患モデルの開発が待たれてきた。今回の研究の端緒として自己免疫性唾液腺炎・涙腺炎を自然発症するMRL/1prマウスを用いて、臓器局在性自己免疫疾患の発症機序・病態形成の解析を試み、IL-1,TNF,IL-6などサイトカイン遺伝子の過剰発現が自己免疫性唾液腺炎の発症と進展に関与していること、その際に、細胞接着分子のうちICAM-1/LFA-1経路が自己免疫性唾液腺炎の成立に重要な役割を果たしていること、また局所組織に破壊をきたす自己反応性T細胞のレセプター解析からその発現には一定の拘束性(Vβ8、Vβ6)の存在することを明らかにした。これらの成果のもとに、シェーグレン症候群の病因解明のための疾患モデルの確立を目的として、以前に筆者らが報告した舌下腺粘膜細胞に分化異常をきたすミュータントであるNFS/sldマウス(Am J Pathol 1988,132:187-191)に着目し、生後3日目に胸腺摘出を施すことによって、耳下腺・顎下腺のみならず、従来まで誘発の困難であった涙腺にも自己免疫性病変が高頻度に自然発症することをはじめて見いだした。本研究により、唾液腺・涙腺に必発する自己免疫性病変の発症機構および病態形成の詳細な解析が試みられ、免疫組織化学的・分子生物学的解析により、病変局所におけるサイトカイン遺伝子(IL-1β,TNFα,IL-2,IL-4,IL-6)の発現異常、接着分子(ICAM-1,LFA-1.MEL-14,CD44)の調節異常、浸潤T細胞レセプターのOligoclonalityなどを明らかにすることが出来た。今後このマウス疾患モデルを用いてシェーグレン症候群の病因解明を進めると共に、ヒト疾患への治療を含めた実験
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