研究概要 |
平成3年度においては、まずRT-PCR(Reverse Transcription-Polymerase Chain Reaction)法に必要なプライマーをコラゲナーゼ(線維芽細胞型)コラゲナーゼインヒビター(TIMP-1,TIMP-2),β-アクチン(内部コントロール)のDNA塩基配列をもとに設計合成し、PCR予備実験によりこれらが良好に働くことを確かめた。平成4年度においては、微量しか採取できない歯肉組織中のコラゲナーゼ及びコラゲナーゼ・インヒビター(TIMP-1,TIMP-2)mRNA発現を検索するためにRT-PCR法の方法論を確立させ、実際にヒト歯肉サンプルを用いて実験を行った。具体的には、全RNA抽出キットを用いて抽出した歯肉RNA(0.5μg)を、まず逆転写酵素反応によってDNAの変換し、さらに、コラゲナーゼ(線維芽細胞型)及びコラゲナーゼインヒビター(TIMP-1,TIMP-2),β-アクチン(内部コントロール)の各種プライマー及びTaq-DNAポリメラーゼを加え、PCR反応(94℃1分,60℃2分,72℃3分)を行った。その際、放射能標識[α- ^<82>P]dCTPを加えておき、2サイクル毎のPCR産物中の放射能をレーザーイメージ・アナライザーにて測定することで増幅効率を求めた後、Chellyら(Nature,1988)の公式に準じて、コラゲナーゼ及びコラゲナーゼ・インヒビター(TIMP-1,TIMP-2)mRNA発現レベルを求めた。この方法によって、歯周炎患者10名、健常者5名より得た歯肉における各mRNA発現レベルを調べた結果、患者群では健常者群に比べコラゲナーゼ(線維芽細胞型)及びTIMP-1mRNA発現レベルが有意に高いのに対し、TIMP-2mRNA発現レベルは両者で有意差が無いことがわかった(J.Periodont.Res.に掲載受諾済)。今後、もう一つの間質コラゲナーゼ(好中球型)のmRNA発現レベルについても併せて検索し、歯周炎に伴う組織破壊メカニズム解明に役立つさらなる知見を得たいと考えている。
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