研究概要 |
プロスタグランジン,ロイコトリエンや血小板活性因子など炎症性メディエーター産生の律速酵素であるフォスフォリパーゼA_2(PLA_2)が歯周病患者の歯肉溝滲出液(GCF)中に認められるのか,また,この活性測定が歯周病患者の病態を反映しうる有効な方法になりうるか否かを追究した。PLA_2活性はフォスファチジルエタノールアミンのアラキドン酸を^<14>Cでラベルした基質を用い遊離した[^<14>C]-アラキドン酸の放射活性を測定することにより算出した。その結果,未治療患者のGCF中の約半分にPLA_2活性が検出された。このGCF中のPLA_2活性は同部位より抽出された歯肉組織中のものと高い正の相関関係が認められたが,一方,唾液中や血液中では活性が検出されなかった。また,GCF中の活性は歯周治療により著しく減少した。このように,GCF中のPLA_2は歯肉組織に由来しており,その程度は歯周病の病態に相関しているものと推察された。そこで,これらのPLA_2活性をdisease activityの指標であるといわれているプロービング時の出血(BOP)の有無で分類した。未治療患者のGCF中のPLA_2活性はBOP(+)のものがBOP(-)のものに比べて2.6倍と有意に高かった。また,BOP(+)であった部位で歯周治療後BOP(-)になった部位のPLA_2活性はほとんど検出できないレベルまで顕著に減少したのに対して,BOP(+)で治療後もBOP(+)のままであった部位のPLA_2活性には有意な減少が認められなかった。 これらの結果は,GCF中のPLA_2活性測定が歯周病の状態を反映しており,将来disease activityを判定する指標の1つとして有効な方法になりうるものと考えられた。
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