研究概要 |
チタンは優れた生体適合性,耐食性,機械的性質を持ち歯科用合金として理想的な特性を兼ね備えている.しかし,鋳造がきわめて難しく,歯科補綴物を作ると大きな鋳造欠陥が出きやすいなど多くの加工上の問題点をかかえている.本研究はこのチタン鋳造加工の因難を克服するため,チタンの補綴物の加工に欠陥のできにくい超塑性成形法を応用しようとするものである.Ti-6Al-4V合金がチタンの融点よりはるかに低い900℃前後の温度で餅状となり,低い応力の元の長さの10倍以上も良く延びる超塑性を利用して,簡単に欠陥がなく精度の良いチタン合金補綴物を得るための基礎的研究を目的とした.先ず,超塑性チタン合金床の表面性状,機械的性質,型材の膨張と適合精度,成形条件と成形度など,成形性を検討した.また,超塑性成形と同時に拡散接合によりクラスプを直接接合する方法について基礎的検討し,接合部の耐食性を調べた. 超塑性Ti-6Al-4V合金の成形性の検討では、改良したリン酸塩系埋没材の型にTi-6Al-4V合金板をセットし,950℃に加熱してアルゴンガス圧で超塑性成形を行った。この超塑性成形したTi-6Al-4V合金床の適合性はCo-Cr合金により鋳造床より良好で、型との反応が少なかった。引張強さ、伸びもCo-Cr合金より優れ、義歯床の成形法としてきわめて有効と考えられた。また,バルジ試験から補綴物の形態と成形条件を明らかにした. 拡散接合の検討では、Ti-6Al-4V合金の超塑性成形時に純チタン、チタン合金、コバルトクロム合金を中間材と共に重ね合わせ拡散接合を行い、接合強さ測定、界面元素分析を行った。この結果、中間材にパラジウム箔や14K〜20Kの金ろう箔を用いれば純チタン,チタン合金がTi-6Al-4V合金の超塑性成形と同時に拡散接合できることがわかった。この接合部分の耐食性も歯科材料として十分であった.
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