研究概要 |
義歯裏装材は,その特有な粘弾性を利用し,補綴臨床において組織調整,動的印象,暫間裏装等の目的で広く用いられている。使用目的に応じたレオロジー的性質は,異なると考えられている。しかし,義歯裏装材を構成する化学組成および構造的因子が,レオロジー的性質に及ぼす影響については明らかではない。 本年度は,動的粘弾性測定装置を用いて,義歯裏装材を構成する化学組成および構造的因子が,ゲル化時間と動的粘弾性に及ぼす影響を検討し,以下の結果を得た。 1.義歯裏装材のゲル化時間は,粉末ポリマー分子量,粉末ポリマー粒径,エタノール含有量,可塑剤の種類によって調節が可能である。 2.可塑剤の分子体積,溶解パラメーターおよび粘度の要因のうち,なかでも分子体積がゲル化時間に大きな影響を及ぼした。 3.義歯裏装材の化学組成および構造的因子は,ゲル化時間における動的貯蔵弾性率,動的損失弾性率に影響を及ぼした。なかでも粉末ポリマー平均粒径,可塑剤の種類が大きな影響を及ぼした。 4.義歯裏装材の化学組成および構造的因子は,ゲル化後における動的貯蔵弾性率,動的損失弾性率に影響を及ぼした。 5.義歯裏装材の化学組成および構造的因子は,ゲル化時間からゲル化後の損失正接変化率に影響を及ぼした。 以上の結果より,本材の化学組成および構造的因子によって,使用目的に対応した,義歯裏装材のゲル化時間および損失正接変化率を調節できることが示唆された。さらに,本材のレオロジー的性質の一端が明らかになった。
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