研究概要 |
本研究はin vivoにおけるインプラント・骨界面の骨構造を三次元的に明らかにできる新しい生体力学解析システムの構築を目指した。平成3年度,抜歯後3カ月を経過したニホンザル成猿3頭のP_2M_1,M_1P_2,P_1P_2部にそれぞれ1本ずつアパタイトコーティングインプラント(以下インプラントと略す)を埋入し,それらの組織ブロックを作製した。平成4年度は,次の方法により生体解析システムを完成した。 超精密研磨装置を用いて,組織ブロックを近心から遠心に順に厚さ75μmに研磨し,同研磨面を万能投影機上で倍率10倍にトレース後,顎骨断面像を得た。この操作を順次繰り返し,得られた70枚の顎骨断面像をデジタイザーによりコンピュータに入力,独自に開発したソフトウエアを用いてインプラント・骨界面の三次元組織像を構築した。コンピュータブラフィックスを用いて任意方向からの断面像を作製し,インプラント・骨界面の立体的観察を可能にした。次いで,骨接触率およびインプラント・骨界面の新しい評価として従来の二次元的評価に代わる三次元形態計測により,インプラント表面からそれぞれ0〜75,75〜150,150〜225,225〜300μm離れた領域の骨体積率を算出した。また,各領域での骨の占める部分をインプラント表面から順次重ね合わせ,骨構造のシミュレーションを作製した。骨接触率はインプラント全周で80.9,68.1,68.8%,骨体積率はいずれのインプラントも各領域において60〜70%の値であった。骨構造をシミュレートさせた像から,インプラント近接部における骨の三次元的広がりが明らかになった。以上より,in vivoにおけるインプラント・骨界面の構造を組織学的見地から三次元的に明らかにし,インプラント近接部の骨構造をシミュレートできる生体解析システムを完成することができた。今後,力学的考察を加えることにより生体力学解析システムへと発展可能であることが示唆された。
|