研究概要 |
マンノース結合蛋白(mannose-binding protein:MBP)を人血清から精製し,そのassay系を確立後,各種体液,正常人および疾患におけるMBPを測定しその病態解析への応用性を検討した。 1)精製MBPは2ME下のSDS-PAGEで32kDのバンドを示し,ほぼ純粋であったが,家兎に免疫し抗MBPを作製したところα2-macroglobulinがこれにassociateしていることが分かり,MBPと何らかの関係があることが示唆された。 2)3-100歳までの正常人血清1085について測定し正常値を求めた。年齢差があり,若年ほど高く年齢と共に減少した。全体の平均値は1.72μg/ml. 3)MBPの生直後の変化をみると,臍帯血は約1μg/mlのMBPを含み既にかなりのMBPレベルを保っているが,生後急速に上昇し,5日目までにほぼ生涯最高値に達した。 4)尿や髄液,母乳は血清の1/1000程度で,ほとんどのMBPは血清に存在した。 5)慢性感染症で一般に高値をしめし,特に結核は有意に高かった。種々の免疫不全症も有意に高く,慢性の感染を反映するか,または免疫不全の感染防御因子として代替的に発現する可能性が考えられた。 6)腎組織におけるMBPの局在を蛍光抗体法で検索すると,糸球体に種々の物質が沈着する疾患ではMBPは主に補体成分とassociateして沈着が見られた。MBPを介した抗体非依存性の糸球体沈着の機序の存在が推測された。 本研究で日本人におけるMBPの正常値が設定された。以後各種疾患におけるMBP測定の指標になると考える。α2-macroglobulinのMBP機能発現における調節機構の存在が本研究で示唆された。腎組織における沈着物質の一つにMBPが同定された。腎疾患の発症とMBPの関与の研究の進展が望まれる。
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