研究概要 |
本研究はエンドセリン(ET)-1の生合成と分泌機序を血管内皮細胞と非血管系組織で検討し,ETファミリーによる血管系での細胞内情報伝達系を明らかにすることを目的とした。内皮ならびに上皮細胞でのET-1の分泌は構成性であり,その調節は遺伝子発現レベルで行われている。アンジオテンシンやバゾプレッシンはPI応答を惹起してCキナーゼの活性化と細胞内遊離カルシウム濃度を増加させるが,いづれも両細胞系での重要な情報伝達系としてET-1遺伝子の転写活性を亢進させる。ETレセプターサブタイプのうちETAレセプターは血管平滑筋に,ETBレセプターは血管内皮に分布し,共通してGq蛋白と共役しホスホリパーゼCを活性化する。血管平滑筋のETAレセプターはGs蛋白とも共役してアデニル酸シクラーゼを活性化し,血管内皮のETBレセプターはGi蛋白とも共役してアデニル酸シクラーゼを抑制する。したがって複数のG蛋白と共役して多彩な情報伝達を形成することが示唆される。内皮のETBレセプターNO生成に関与している一方,血管平滑筋にもETBレセプターが存在し,ETAレセプターと同様に血管収縮作用を細胞増殖作用に関与している。以上の研究成果からETレセプターサブタイプは複数の情報伝達のクロストークによって多彩な生現作用を果していると結論される。
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