研究概要 |
多分化能と自己複製能をもつと考えられる血液幹細胞は、単クローン抗体を用いたFACSによる分離によって、ほとんど1:1に純化できるようになった。昨年度からの解析により、マウス、ヒト血液幹細胞ともに、SCFの受容体型チロシンキナーゼであるc-kit分子を低発現していることが明らかとなった。また最近、flk-2も幹細胞に発現されていることが報告された。これらの他に未知のチロシンキナーゼ受容体が存在することは、十分に想像されることである。 本年度は、幹細胞に発現される遺伝子のうち、この受容体型チロシンキナーゼについて検討した。FACSで分離したマウス血液幹細胞(分化抗原陰性、c-kit陽性、Sca-1陽性)5000個からRNAを調製し、チロシンキナーゼのサブドメインをプライマーとしてPCRを行い、約100個のクローンの塩基配列を検討した。このうち受容体型チロシンキナーゼは、10種13クローンで、eck,IGFR,c-kit,flk-1,flk-2,flt-4,jilの他に、metに類似した新規の遺伝子であった。このうち、結合因子が明らかなのはインスリン様成長因子とSCFだけである。今後、これらの結合因子を探索し、その血液幹細胞に及ぼす作用を検討していく必要があると思われる。更に、svc型遺伝子は8種37クローン得られた。その中には、最近、無ガンマグロブリン血症で異常のあることが明らかとなったatkも含まれており、幹細胞からB細胞へ分化する過程でいかなる役割を果たしているのか、興味がある。 また、昨年度から引続き、幹細胞特異的抗原であるCD34の遺伝子発現調節を検討するために、genomic DNAをクローニングし、現在CATアッセイを行っている。今後、CD34分子の機能を個体レベルで明らかにするために、トランジェニックマウスの作成およびジーンターゲッティングを行う予定である。
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