配分額 *注記 |
6,100千円 (直接経費: 6,100千円)
1993年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
1992年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
1991年度: 4,100千円 (直接経費: 4,100千円)
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研究概要 |
正常ヒト血しょうをエラスチン-セファロースカラムにかけ,吸着タンパク質を調べたところ,主に免疫グロブリンMであった。この免疫グロブリンMは,肝がん細胞にグルタミンアナローグとともに加えると,細胞を殺傷した。しかし標品によって性質が一定せず,研究を進めるのが困難であった。 一方,ヒト血しょうをラクトース-セファロースカラムを用いたアフィニティークロマトグラフィーにかけると,β-ガラクトシドと特異的に結合する免疫グロブリンGを得た。特異性を検討した結果,従来知られていた抗α-ガラクトシド抗体や抗T抗体と異なる新しい自然抗体であることがわかった。 生体内にあって,この抗体に反応する抗原を検索した。まず,β-ガラクトシド構造を持つ20種類のグリコリピドとの結合を調べたが,どのグリコリピドとも結合しなかった。また,メラノーマB16の細胞溶解物中の糖タンパク質について,この抗体と結合するものを検索したところ,分子量80Kのバンドが検出された。しかし量が少なく,このタンパク質の構造研究を進めることはできなかった。 ラクトース構造をもつネオグリコタンパク質を合成し,これを抗原として抗β-ガラクトシド免疫グロブリンG量を測定するELISA系を確立した。正常なヒトの血液約50例について測定したところ,平均83.2+67.0μg/mlであった。ABO血液型とは無関係であり,また抗α-ガラクトシド抗体量との間にも,相関はみられなかった。 がん患者7例の血液についても調べた。抗β-ガラクトシド抗体量の著しく高いもの(560μg/ml)が1例発見された。細胞のがん化に伴い,β-ガラクトシド基が発現することが報告されているので,この抗体は生体をがんから守る防御システムの一つなのかもしれない。
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