研究概要 |
前年度までの研究で,メタン細菌,好塩菌,エオサイトなどの古細菌が,真正細菌によりは真核生物に近縁であることが確かめられたが,これら3つの古細菌のグループと真核生物との関係は不明であった.今年度は,ペプチド鎖伸長因子のアミノ酸配列データを,われわれが開発した最犬法にもとづいて解析した結果,これらの古細菌がすべて系統的に一つのグループとしてまとまるという可能性のほかに,エオサイトが特に真核生物に近いという可能性も浮上した. ミトコンドリアなどのオルガネラをもたない真核原生生物の系統学的な位置づけは,真核生物の初期進化をさぐる上で極めて重要である.従来この問題は,リボソームRNAの配列データにもとづいて研究されてきたが,われわれはリボソームRNA分子系統樹の問題点を指摘した.最大の問題は,近縁な生物の間ででも,塩基組成が大きく異なることがあり,このことが間違った系統樹を導くことがあるということである。われわれは,ペプチド鎖伸長因子やRNA合成酵素などといった保存的なたんぱく質のアミノ酸配列データを解析し,塩基組成が大きく違っているような場合でも,たんぱく質のアミノ酸配列はその影響を受けず,そのようなデータからえられる分子系統樹の信頼性が高いことを示した。 ミトコンドリアをもたない真核原生生物の一種であるギアルディアのペプチド鎖伸長因子EF-1αの遺伝子の塩基配列を決定し,この原生生物が真核生物の祖先型生物に近い可能性のあることを示した.
|