研究概要 |
蛋白質の理解に三次元構造情報が本質的な役割を果たしており、更に多くの独立な三次元構造情報を私達は必要としている。蛋白質X線結晶解析の場合、律速段階である結晶化条件の確立の過程を加速することによりこの要請に答えることが出来る。そこでこの研究では,分子整形を迅速に系統的に行うことにより、結晶化条件の探索課程を加速することを目的とした。 実際には,9種の蛋白質(F1-ATPase,α3β3複合体,DNAポリメラーゼβ,EnvZ蛋白,phoB蛋白,Band3,CamR蛋白,ラセマーゼ,フラジェリン)を対象にし、以下(1),(2)の実験を行なった。 (1)整形された分子を準備する。:蛋白質分解酵素を用いて、適当な分子整形のおきる条件を見つける。整形された分子を精製する。 (2)整形された分子を用いて結晶化実験を行う。その結果、 1.ラットDNAポリメラーゼβについては,整形条件の検討の後,C末側の大きなドメイン(分子量31,000)が非常に良い結晶になることを確かめた。この結晶についてはデータ収集を行ない,現在2.5Å分解能の良質の回折パタンを記緑できている。また重原子置換体の深索も進行中である。これにより,整形分子も良質の結晶化を作りうることを示すことができた。 2.サルモネラ菌フラジェリンの場合には分子量41,000の断片(41k断片)を使うことにより、フラジェリンでは得られなかった結晶を得ることができた。 3.CamR蛋白、PhoB蛋白については、整形条件の検討の後,安定したドメイン構造が得られることがわかり、その精製について更に検討した。 以上により、分子整形を日常的結晶実験のパラメータに組み込むことの有効性を示すことができた。
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