研究分担者 |
宮島 郁夫 九州大学, 農学部, 助手 (20182024)
浦川 成美 九州大学, 医学部, 助手 (80232916)
今村 徹 九州大学, 医学部, 助手 (00193681)
工藤 恵子 九州大学, 医学部, 助手 (10186405)
木村 恒二郎 九州大学, 医学部, 講師 (30153191)
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研究概要 |
従来,法医学領域での斑痕判定といえば主として血痕それも人血痕を対象とし,それ以外の成分は相対的にいえば軽視されてきた.しかし,実際には生物や化学物質に由来する多種多様の物質が人体,衣類,器物に付着,あるいは現場に残留する. よって,血痕以外の斑痕同定も法医・鑑識上さらには裁判上,重要な意味を持つことになる. 今回,薬毒物分析とは異なる観点から,日常行動領域あるいは犯罪現場で接触する機会の多い植物斑痕類に対する液体クロマトグラフィーを中心に用いた分析化学的手法の開発を行った. 試料として身近にみられる10属13種の植物を選び,斑痕状態あるいは乾燥粉末状とした.この試料のflavonoid系色素成分を分析対象とし,これらに対する抽出,分離精製,検出,定性,定量のために必要かつ最適な条件を設定した.この研究の過程で,flavonoidの異同識別を容易に行いうる指標の作成にも成功した. さらに本法を用いて鑑定試料に対する実務応用を試みた.すなわち強姦,殺人事件の被疑者あるいは被害者の着衣に付着した植物斑痕中のflavonoidと,犯罪現場と考えられる場所に生育する植物中のflavonoidの分析パターンの比較を行った.その結果,本法が犯罪現場の特定に有効であることが判明し,植物斑痕が捜査および裁判上において、血痕同様に証拠価値のあるものとして取り扱うことができることを証明した. 本研究は法科学領域に新たなる分野を開拓し,社会に対して貢献し得るものと考えられる.
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