研究概要 |
本研究では,試作した高真空用動力循環式歯車運転試験機を用いて,S45C歯車,SUS440C歯車とこれに固体潤滑膜(MoS_2)をコーティングしたSUS440C(MoS_2)歯車に対して,高真空中(p=10^<-5>Torr)および大気中で種々の運転条件下で運転試験を行って,これらの歯車の摩擦・摩耗特性,効率などについて検討を加えるとともに,低温用歯車パルセ-タを用いて,室温および低温(-60℃)下において浸炭焼入れ歯車に対してパルセ-タおよび衝撃試験を行って,低温下における浸炭焼入れ歯車の曲げ疲労・衝撃強度および曲げ疲労強度に及ぼす衝撃荷重の影響について明らかにした.その結果,つぎの諸点が明らかになった. 1.歯面の摩擦係数は,S45C,SUS440C歯車では真空中の方が大気中よりも小さいが,SUS440C(MoS_2)歯車の場合,真空中と大気中とではあまり変わらない.回転速度,ヘルツ応力の影響は,いずれの歯車においてもほとんど認められない.2.摩耗量は,S45C,SUS440C歯車では真空中の方が大気中よりも小さいが,SUS440C(MoS_2)歯車では真空中と大気中ではあまり変わらない.3.SUS440C(MoS_2)歯車の摩耗は,歯面に沿ってほぼ一様に進行する.4.宇宙基地計画におけるJEMで現在考えられている基準ヘルツ応力σ_H=735MPaの下ではSUS440C歯車は運転開始直後に焼付くが,固体潤滑膜をコーティングした場合には焼付きに対する寿命が大幅に改善され,回転数10^4程度にもなる.5.低温下における浸炭焼入れ歯車の曲げ疲労強度は室温の場合よりも大きくなるが衝撃強度は逆に小さくなる.6.室温,低温下のいずれの場合も曲げ疲労強度はある一定の有効硬化層厚さ(H_v550に至るまでの表面からの距離)で極大値を示すのに対し,衝撃強度は硬化層厚さの増加につれて減少する.7.室温,低温下の曲げ疲労限度は,いずれも衝撃破壊限度荷重の80%以上の衝撃荷重を加えることによって低下する.
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