研究概要 |
近年、電子機器電源の小型化が電子機器自体の小型化にとって重要課題になっている。しかし、電源の小型化のために必要なスイッチングの高周波化に対応できる高周波磁心の開発が立ちおくれており、小型化はいきずまっている。本研究では異方性の誘導により磁気特性を顕著に制御することが可能なアモルファス磁性体を超薄帯、細線の形状にしたうえで、磁壁固着の手法により磁化回転型高周波磁心の開発を目指した。その結果、固着磁壁のスピン構造をマイクロKerr顕微鏡による表面磁壁観察及び計算機シィミュレイションにより明かにすると共に、1MH以上を動作周波数とする抵損失超薄帯磁心および高インダクタンス細線を開発した。アモルファス薄帯の代表的な特性は板厚4.7μmの磁心において、最大磁束密度0,1T、励磁周波数100kHzおよび1MHz時,各々、13mW/cc,860mW/ccの低損失が得られた。これらの値は他の代表的な高周波用磁心の30-40%に相当する低い値であり、電源機器への実用化が充分に期待できるものと考えられる。さらに、初透磁率として各周波数で10,000及び1,500の極めて高い値が得られた。一方、磁壁の固着の処理を行ったアモルファス細線により、100kHzで1cm当り3μH,1Mzで1.5μHのLを有する高インダクタンス素子を開発した。これらの高インダクタンス値はアモルファス細線に直接通電して発生される円周磁界印加によっても得られるので、インダクタンスマイクロ素子への応用に適していると考えられるが、アモルファス構造の高電気抵抗率に起因する抵クオリテイファクターの改善が必要である。
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