研究概要 |
本研究は,人間の聴覚の基本特性として重要な,等ラウドネスレベル曲線の精密計測を実施し,国際規格(ISO226)改訂の際の基礎データとして供することを目的とした.当初計画を若干変更したが,目的を達するために,研究補助金助成年度内に,以下の2点に関する研究を実施した. (1)自由音場および拡散音場において,等ラウドネスレベル(40phon),最小可聴値,および,頭部伝達関数を測定し,両音場でのレベル差(△L)が単に音圧レベルの差だけで規定できるのか検討した.測定した周波数範囲は250Hz〜2kHzである.その結果,等ラウドネスレベルおよび最小可聴値の△Lと頭部伝達関数の△Lは,特性の形状が非常によく一致していることがわかった.しかし,最小可聴値の△Lと頭部伝達関数の△Lの間に,全体的に一定のレベル差があることから,その原因が何であるかを確認のための実験が必要である. (2)ラウドネスレベル測定のための心理学的測定法の再検討,および,効率的実験方法開発のための基礎的研究を実施した.現在用いている実験方法である.一対比較の恒常法の基本的性能を押さえるために,時期を隔てて同一被験者が同一条件の実験をした場合の結果の再現性と,判断の片寄りが多い場合の結果への影響ついて検討した. その結果,テスト刺激のレベル変化幅に依存するが,適切なレベル変化幅の場合でも,主観的等価点に1〜2dB程度のばらつきが生ずる可能性があることがわかった.判断の片寄りに関する実験より,判断の片寄りを少なくする方向に,結果がバイアスされることがわかった.
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