研究概要 |
本研究は有害成分や不純物を含有し,処分や管理の困難な廃油の安全で経済的な処理・処分方法の開発を目的としている。具体的にはフライフッシュ,砕石微粉末,製紙焼却灰や水砕スラグなどの産業廃棄物に廃油などを含浸させ,セメント系安定材により固化し,その硬化体を建設材料として有効利用する可能性を検討した。 1.高炉水砕スラグ硬化体がその潜在水硬性により最も大きな強度を発現し,コンクリート二次製品のような高強度を必要とする材料としての利用が可能である。 2.製紙焼却灰は廃油を最も多く含浸し,処理能力が高い。 (1)最大乾燥密度が得られる程度の含浸液の量では,含浸液中の油の割合が少ないほど強度が発現する。この場合,固化材添加率3%で道路路床に,9%で下層路盤に使用できる。 (2)含浸液の量が多くなると,長期(28日以上)の強度発現が顕著であり,含浸液中の脂の割合が20〜30%の時に最も大きな強度を示す。固化材を11%添加すると上層路盤としても使用できる。 3.廃油中の硫黄分と固化材との反応によって生成されるエトリンガイトが養生初期の強度発現に大きく貢献し,長期にわたる強度発現には固化材のポゾラン反応によるCSH系反応物の生成が重要である。そして,硬化反応の促進には処理灰中の水分の存在が重要であり,最適水分量の存在することがわかった。その結果,廃油と固化助材中の水分量を調整することにより効果的な廃油の固化処理が可能となる。 4.硬化体からの油の溶出試験の結果,混合液中の油の割合が30%の時には固化材添加率12%以上で,油の割合が10%の時には固化材添加率3%で,「産業廃棄物の処理及び清掃に関する法律」に定められている判定基準値以下の溶出量となり,周辺環境へ及ぼす影響は少ないことが明らかとなった。
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