研究概要 |
1.高級n-アルカンの合成:炭素数80までの高純度n-アルカン(略記Cn:nは炭素数)を得るには、充分精製したカルボン酸を原料とし、奇数はケテン二量化法、偶数はモノヨウ化アルカン(略記CnI)のウルツ二量化法の採用が最適であることを確認した。より長鎖試料を得るには、鎖延長反応により長鎖のCnIの合成が必要となる。C40I及びC51Iより夫々C80,C102を合成した。ヨウ化物の鎖長が長くなるとウルツ反応の活性が低下しC60IからのC120は微量、C80Iでは二量化は進行せずC160は得られなかった。反応条件の選択を検討する必要がある。この炭素数領域のn-アルカンを得ることを目指して、1,40-ジヨードテトラコンタンのウルツ多量化を行い、最終的にGPC法で精製しC120,C160の合成に成功した。この方法はアルカン系列の分離精製にかなりの時間を要するが、比較的短鎖長のα,ω-ジヨウ化アルカンを用い、即ち鎖延長反応が一段ですむので、精製法の検討により物性測定に必要な量を得うると考える。 2.純度分析法の検討:本課題の研究費で購入した高温キャピラリ・カスクロマトグラフ装置を用い純度分析を行った。450℃までの昇温分析法により定量的データを求めることができる。C80は99.3%の純度を示し、C102も溶出可能であり98.8%であった。C120は溶出するがデータに再現性がなかった。C160の分析は不可能であった。 3.結晶基礎物性の測定:C80,C102,C120及びC160の塊状結晶化物のDSC測定を行った。融点は夫々109.6,115.7,119.7および125.0℃であった。希薄溶液から得たC160単結晶のDSC曲線には、折りたたみ鎖結晶の融解を示すピークにつづき伸びきり鎖分子の結晶化を示す発熱ピーク、更にその融解が発現した。電子顕微鏡観察からの形態はポリエチレン結晶特有の菱形状で、その厚みは約10nmであり分子鎖が一折れしていることを示している。C120結晶も同様の現象が観察された。
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