研究概要 |
試作した蒸着重合(Vapor-coating)装置を用いてジスピロ[2.2.2.2]デカ-4,9-ジェンの蒸着重合をおこなった。その結果、ジスピロ[2.2.2.2]デカ-4,9-ジェンの昇華ガスは450℃以上で熱分解反応を受け、その熱分解ガスを20℃で凝縮させると、透明なフイルムを10から20%の収率で与えることがわかった。クロロホルムを溶媒としたゲル浸透クロマトグラフイーからその数平均分子量はポリスチレン換算で3万5千であった。そのフイルムの構造は、1,4-ビス(1-クロロエチル)ベンゼンのウルツ・フィティッヒ反応生成物と同一の溶解性、赤外吸収スペクトルおよび核磁気共鳴スペクトルを有していることから、ポリ(1,4-フェニレン-1.2-ジメチルエチレン)であることがわかった。さらに、ジスピロ[2.2.2.2]デカ-4,9-ジェンの熱分解ガスを-78℃のヘキサンに溶解して塩素と反応させたところ、1,4-ビス(1-クロロエチルベンゼン)を与えた。したがって、気相熱分解によってジスピロ[2.2.2.2]デカ-4,9-ジェンのシクロプロパン環が開裂し、生成したジラジカル中間体、2,2'-(1,4-フェニレン)ジエチル ジラジカル、が異性化してより安定な7,8-ジメチル-1,4-キノジメタンを生成し、その蒸気が凝縮と同時に重合する反応機構が提案された。以上の実験結果から、スピロプロパン環の開環重合の初めての例を見出すことに成功した。
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