研究概要 |
Dehydrosinefunginを大量生産するための生産条件を検討するために迅速にして正確なる定量法の確立が不可欠であった。イオン交換カラム処理によって10倍に濃縮した画分を試料としHPLCで本化合物の分離定量を行う系を確立した。本化合物とsinefungin,amidinosinefunginは塩基性のヌクレオシド類であるため一般のクロマトグラフィーでは分離が不十分であったが,ペアードイオンクロマトグラフィーを用いることにより分離可能となった。すなわち,ODSカラムを用い,1-ブタンスルホン酸ナトリウムをカウンターイオンとし,移動相に0.02Mリン酸一カリウム溶液を用いる条件が最も効果的であった。本法による定量値を指標にして,種々の培養条件の検討を行い,生産性を従来より10倍高めることに成功し,培養液1lあたり20mg以上生産できるようになった。この最適培養条件を用いて大量培養を行い,化合物の精製を試み,最終的におよそ200mgの精製標品を得た。この化合物量により,これまで行えなかった三年生松への投与実験が可能となった。 一方,本化合物の松樹体への接種法についても,標品として,酒石酸モランテルを用いて,予備的な検討を加えた。三年生苗木の樹体に挿入したピペットチップから薬剤溶液を供試することにより,信頼できる結果が得られることがわかった。この方法でDehydrosinefunginを投与した三年生苗木にマツノザイセンチュウを後接種したところ,0.1mgの投与で防除効果が認められた。これは酒石酸モランテルの効果の10倍であり,本化合物が樹幹注入剤として有望であることが示された。今後さらに三年生苗木を用いる防除試験の再現性を確認するとともに,大径木を用いる防除試験を行う予定である。
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