研究概要 |
高性能を有するセルロース系およびリグニン系高吸水性材料を開発するため,水溶性セルロース(HEC),パルプ等の多糖類あるいはリグニンを含む木質繊維を基材とし,これにモノマー(アクリルアミド)をグラフト重合させた後,枝ポリマーを部分加水分解する方法での高吸水性材料の製造および得られた材料の吸水性等の物性や吸水ゲルの構造と性質について検討した。得られた結果の主な点は以下の通りである。 1)HECやパルプを基材とするグラフトポリマーからの吸水材料は純水中および塩類溶液中での吸水量がそれぞれ1000-3000g/gおよび100-300g/gに達するものであることがわかった。この値は市販の高吸水性材料に比べ,3-5倍程度高い値である。 2)セルロースを基材とする高吸水性材料が吸水したヒドロゲルにはどのような細孔が存在しているかを明らかにするため,溶質排除法によって評価した。その結果,純水中で膨潤したゲルの場合,吸水された水の大部分は560A以上の大きな口径の孔に存在している。また,塩類溶液中で収縮したゲルの場合には大きな細孔(560A以上の細孔)が優先的に収縮することによって,試料の吸水倍率が低下していることがわかった。 3)セルロース系高吸水性ポリマーの塩類溶液中における吸水性は定量的にはFloryの理論には従わず,その吸水量は塩類溶液濃度の対数値と直線関係にあることが示された。 4)多量のリグニンを含有する木質繊維にビニルモノマーをグラフト重合させるには,予め繊維を過酢酸で軽度に酸化処理した後,チタンイオンとのレドックス系で重合を開始するのが有効であることを見出した。 5)リグニンスルホン酸を基材とするグラフトポリマーからの吸水材料の吸水性は外部溶液のイオン濃度やpHの影響を受け難いことが明らかとなった。
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