配分額 *注記 |
16,400千円 (直接経費: 16,400千円)
1993年度: 5,200千円 (直接経費: 5,200千円)
1992年度: 4,700千円 (直接経費: 4,700千円)
1991年度: 6,500千円 (直接経費: 6,500千円)
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研究概要 |
本研究では,まず胚性幹細胞の分離法について研究し,体内受精に由来する129/SvJ系マウスの胚盤胞から,きわめて増殖性に優れた2株の細胞株を分離しA3-1およびA3-2株と命名した。このうちA3-1株の細胞については継代9代目の染色体分析でその約78%が正常な正二倍体(2n=40)の核型を有し,また体外培養での分化試験の結果,自律的に収縮をくり返す心筋核細胞をはじめ各種の細胞へ分化し得ることが確められた。さらに,未分化状態に継代維持されたA3-1細胞をC57BL16NまたはそのF1胚盤胞に注入してキメラ胚を作製し,偽妊娠雌マウスの子宮へ移植したところ,雄のキメラ個体が得られ,その個体からA3-1細胞の遺伝形質を受けつぐ子孫も得られることが確められた。以上の結果から,今回樹立された細胞株は胚性幹細胞としての条件をすべて満たしていることが明らかになった。次いで,本研究で得られた細胞株が遺伝子の標的組込みに耐え得るか否かを検討し,さらに本研究の方法が他の系統のマウスおよび他の動物種にも適用可能かどうかを検討した。その結果,遺伝子の標的組込みについては,エンドセリン-1遺伝子およびアクロシン遺伝子のいずれにおいても,相同組換えをヘテロに持つ細胞株が得られ,これらの細胞を用いたキメラ胚の移植実験によって生殖系列細胞への分化が確められた。他の系統のマウスへの適用については数種の近交系およびそれら間の雑種第一代胚を用いて種に検討を行ったが,キメラ個体の作出には成功したものの生殖系列への分化までは証明できなかった。なおこの過程で共培養法によるキメラ胚作製の条件を検討し受容胚と胚性幹細胞とに共通する培養液に工夫を加えた。また本法をウシ胚に適用した結果,内部細胞塊由来の未分化細胞集団が得られた。以上の成績を総合し,本研究によって,生殖細胞への高い分化能力を持つ胚性幹細胞の分離および培養のための基礎的条件は確立された。
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