研究概要 |
1.脳および頭蓋の有限要素モデルモデル構築に当たって,各要素の節点力と変位を関連づける要素剛性行列の他に,衝撃問題では時間の効果が入るため,各要素の質量行列を考慮に入れ,時間ステップごとに順次変形量を求めて行った。さらに,脳が非圧縮性材料であるので,節点変位に加えて,Hermannの応力パラメータも未知数とする変分原理をモデルの構築に導入した。 2.実際例における頭部外傷の検討実際の法医解剖における種々の打撃条件下での脳および頭蓋の病理学検査を行った結果,以下の事がわかった。 1)頭部の打撃部位打撲では側頭部が最も多く,次いで後頭部,頭頂部,前頭部であった。転落では後頭部が最も多く,次いで側頭部,前頭部,頭頂部であった。転倒では後頭部が大多数であり,その他側頭部,頭頂部であった。 2)脳挫傷側頭部打撃例では,打撲でcoup contusionが強くみられ,転落でcontrecoup contusionが強くみられ,転倒のほぼ全例でcontrecoupcontusionを認めるのみであった。前頭部打撃例では,打撲の全例でcoupcontusionのみを認めた。転落ではcoup contusionが優位であったが,後頭葉にcontrecoup contusionを認める例があった。後頭部打撃例では,打撲の全例でcoup contusionが強くみられ,転落の大多数例でcontrecoup contusionが強くみられ,転倒のほぼ全例でcontrecoupcontusionのみを認めた。 3)頭蓋骨折打撲および転落では陥没ないし粉砕骨折が多く,転倒では大多数の例で線状骨折を認めた。
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